そのおかげで自然環境が保たれ、今日まで広葉樹林とそこに暮らす人々の生活は守られて来ました。この自然林の中に多くの栃の木の古木が生い茂り、二百十日を過ぎた頃から沢山の実を山の斜面に落とします。
この辺りの集落に住む人々はこの栃の実を拾い集め、持ち帰って日向に干して保存をします。落ちた栃の実は山の斜面の窪地や、谷川近くに転がって集まり、多いときには座り込んで掻き集めるほど採れるそうです。しかし、うっかりすると獣に食べられてしまったり、虫が入ったり、また大水が出ると流されてしまうなど山人の苦労も聞きます。若い人ならば山を広く歩きまわり、沢山拾い集めることもできますが、高齢化の一段と進んだ山里の年寄りでは身近で拾い集めることしかできない様です。笊器(竹で編んだ籠)にわずかの栃の実を干す様は、山里の現状を表しているように感じられます。
栃の木は日本各地に自生し、古来より食用としても利用されて来ました。米が貴重な食糧であった近年まで、こうした木の実や雑穀類などは大切に利用されて来たものと思います。いまでも、東北、北陸地方をはじめ山陰地方にも栃の実を利用した栃餅が伝承しています。
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